市場サマリー
現在、市場では当局による円買い・ドル売り介入と見られる動きが観測され、一時的に160.7円付近の高値から155.5円付近まで急落しました。これは過去3年以上で最も大幅な円高への反転であり、当局が「断固たる措置を取る時期が近づいている」と警告し、円売り勢力への強い牽制が示されたと認識されています。
この介入の背景には、日米の金融政策の方向性の違いが根強く存在します。米連邦準備制度理事会(FRB)は、堅調な経済成長とインフレ圧力の継続を受け、政策金利を「より長く高く」維持する可能性を示唆しています。一方、日本銀行は政策金利を0.75%に据え置いたものの、一部の政策委員が利上げを主張するなど、金融政策の方向性について意見の相違が見られます。日本銀行は、2026年度のコアインフレ予測を2.8%に引き上げる一方で、経済成長率予測を0.5%に下方修正しており、輸入インフレと国内需要の脆弱性という状況への懸念が浮上しています。この日米間の金利差は、キャリートレードのインセンティブとして円安を構造的に支える要因となっており、一日の介入ではその構造が根本的に変わるものではないとの見方が市場にはあります。
また、中東情勢の緊迫化が原油価格を押し上げ、円相場に大きな影響を与えています。米国とイランの紛争によりホルムズ海峡が封鎖され、世界のエネルギー供給に大幅な混乱が生じています。エネルギー資源のほぼ全てを輸入に頼る日本にとって、原油価格の高騰は貿易赤字の拡大と輸入インフレの加速を意味し、これが円売り圧力の一因となっています。日本国債の10年物利回りが2.5%に上昇し、約30年ぶりの高水準に達していることも、インフレ期待の高まりを反映していると見られます。
相場の地合いとしては、当局の介入によって投機的な円売りポジションが一時的に解消され、円高への調整が進みました。しかし、この介入効果が持続するかどうか、市場は慎重に見極めています。介入は時間稼ぎにはなるものの、エネルギー価格上昇による輸入インフレという構造的な問題を解決するものではないとの指摘もあります。
価格動向を見ると、現在156.6円付近で推移しており、直近の急落により、158.6円や157.0円といった節目を下回る水準で取引されています。上値では、157.0円、157.4円、157.5円、157.6円、157.7円、158.0円、そして複数の要因が重なる158.1円といった節目が意識されています。特に158.2円付近には厚い上値抵抗帯が存在します。一方、下値では、156.8円、156.7円、156.6円付近に支持線が意識され、さらに156.0円、155.9円、155.8円、155.0円といった節目が注目されます。市場は、今後の米国の主要経済指標、特に雇用統計の結果が連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策期待に影響を与え、短期的な方向性を決定する要因となるでしょう。中東情勢の動向も引き続き、米ドルの動きやリスクセンチメントに影響を与える可能性があります。